今回ご紹介しますのは、ミニッツリピーターの修理となります。
リピーター関連の部品では1/3位が無くなっている、もしくは使用できない状態でご依頼が有りました。
ミニッツリピーターの心臓部は特に手が入れられており、新規製作は絶対となります。

   
   

この様な超が付く複雑なパーツを新規製作する場合には、正確な設計図が必要なのは当然として
オリジナルに製作した工具、旋盤、設備、知識等々、多くの時間、労力、そして根気が必要となります。
リピーターパーツもしくは時計の中でも一番の複雑さとも言えますので、妥協は出来ません。
センターの穴もパーフェクトでなければ再製作となります。

 
   
   
   

慎重にカットして行きターゲットとする厚さに加工した後に、焼き入れ焼き戻しを施し磨きます。
パーツの資質上、完璧なフラットさも要求されます。
爪楊枝の先が太く見える位の幅をカットして行きますので、極めて困難な作業とお解りただける事でしょう。

 

次にピニオン(歯車)の製作となります。
歯車の製作方法は何通りもありますが、今回はフライカッターでの製作です。
別作のカッターを製作した後に歯をカットして行き、出来上がりましたら焼き入れ焼き戻しを施し完成。
画像のみでは伝わりにくいのですが、歯の大きさ厚み、他のパーツとの兼ね合い等々、
全ての事柄を考慮して製作して行きますので、膨大な時間が掛かる作業となります。

 

研磨をし、同時に試作しておきました軸も取り付けて一旦完成。
幾つかのバージョンがありますので、それも製作して行きます。
元々のパーツが紛失した物、使用できない物の場合には、同じ部品でも幾つも製作する場合が有る事は致し方のない事です。
無い物を他の部品と合わせながら製作すると言うのは、例えばネジが紛失してそのネジを製作する時などと比べ雲泥の差が有ります。

 
   

次にサプライズとクォーターを読ませるパーツの製作です。 
各部品の位置、溝、ネジ穴の位置も完璧さが必要、狂うと使用出来ません。
サプライズを制御する穴も厳密さが要求されます。 
全てが出来上がりましたら焼き入れ焼き戻しを行い完成となります。

   

下部に取り付ける部品も重要、これがきつくても緩くても使用できませんので慎重に製作して行きます。

 
   

かなり省略して説明しておりますが、高さ、厚み、大きさ、仕上がり等々様々な事をクリアーしなければ作動致しません。
例えば長針との兼ね合い、リピーターパーツを作動させた時の幅もしくは運動量、形だけを似せて製作するのでは意味が無く、
膨大な時間を掛けて完成すると言うのはご想像頂けるかと思います。 因みに形だけを似せても絶対に作動いたしません。
1mm以下の中に数段の段数を製作して行きますので、バージョン違いでも設計から全て 0 からの作業となります。

その他にバネ、リピーター部品、ネジ、テーパー軸、ネジ付きのテーパー軸、他等々も製作しミニッツリピーターとして復活です。

当店としては全ての時計でオリジナルのパーツも大事にしたいと考えております、
折角100年近くもしくは150年様々な方たちが色々な意味で見て触って楽しんで来た物ですが、
今回元々のパーツは使用出来ませんので新規製作致しました。

 



さて、今回ご紹介した時計以外にも多くの部品を製作しております。 
下部のクロノグラフ針、針、歯車、ネジ等々載せておりませんが全て製作しており製作可能となります。